男は大地を造り、少しの物思いにふける。
数多の想いがある。本来は、それら全てを忘れ、無の状態で創造を開始するのだが、そんなセオリーはどうでもよかった。
男は、筒のようなものを台地におき、下方に出ていた紐に火をつけた。
パン!パン!と、軽やかな音が響いた。
辺りには、光があふれた。
男は、光を浴びるように大地に大の字に寝転んだ。
久しぶりに光を肌に感じる。
今までもこの感じを持っていたにもかかわらず、ずっと忘れていた。当たり前すぎる日常がその喜びすら消し去っていたのかもしれない。
気持ちのいい日差しが大気を生み出す。
空気の流れを作り出すと、海が動き始めた。
心地の良い波の音。
無音だったのが嘘のようだ。
男はしばしの眠りについた。
別に疲れたわけではない。ただ、その心地よさに身を委ねた結果眠りについただけだ。
不思議なものだ。光があるだけで世界が一変した。
男に内在する宇宙は今だ闇の中だ。
その闇の中で男は存在していた。
不意に男は全ての意識を内側に向けた。
闇の中に自分がたたずむ。純白の猛禽類の翼を大きく広げ、静かに。
闇の中の男は、ゆっくりと呼吸を始めた。
その呼吸の流れが見える。
不思議な感覚だ。
身体の心中線上に存在する7つの場所から、吸われては吐き出されている。
その呼吸の流れが、闇の中の男の身を包むと、深遠の闇は、暗闇に変わった。
微かに何かを形成するその内宇宙、そこには何も無いわけではなかった。
男の閉ざされていた感覚が全てを闇の中に沈めていただけに過ぎない。
うっすらと見える世界、その世界に光を与える方法はなんだろうか。
男は、眠りにつきながら考えた。