光の暖かさに男は身を委ねた。
色々なことを思う。
今、宇宙のいたるところで光が定着しようとしている。
この宇宙にある物質の結合を待っても星々は生まれる。
数多の恒星が打ち上げられたのだから……
男は大地に立ち上がり、深呼吸をした。
内宇宙で不可思議な呼吸をしていた自分をイメージしながら
ゆっくりと身体の中を空気を入れ替えるように
心中線上に7つの光の出入り口をイメージし、上から順に吸い込んでは吐き出す。その空気の流れを一本の線で結ぶとき、不意に身体が軽く感じられた。
大きく広げた翼に光が集い、力が全身にみなぎっていった。
―これが、小周天……
心地よい光の奇跡が身体を包み、全身の気が隅々にまで広がっていく
少しだけ意識を内側に向ける。それだけで、自分に必要な何かが見えてくる。不思議な感覚だ。数多の悩みが薄れていくようだ。何かが頭に響く。その音を声として認識することはまだ出来ない。いや、それが声だという保証は何処にもない。
幻聴なのかもしれない。
そういえばずいぶんと長い時間独りでいる。
独り、その孤独に苦を感じる事はないはずだった。
俺はひとりで生きていられる。そう口にしていた時代があった。それが、虚勢であることをいまさらながらにして知った。
今、身を包む、小周天の光は、その大地からこぼれる命の息吹。何も与えていないはずの材料だった物質、そこにも確かな命の息吹が存在している。
男は、大地に降りたち、鞄を拾い上げた。その中には、集めてきた色々な種子が入っている。その種子は、ひとつのタブーでもあった。自分が創造した宇宙で生成された独自の種子であっても、他の宇宙に持ち込むことは禁止されている。時の流れの歴史が大いに狂うからだった。無論、中には、師父より預けられた浄化済みの命の種子も入っている。
―これも、選択の一つ…
何かに取り付かれたかのように男は、鞄をシェイクした。数多の情報と種子が混ざるように。
どれほどの時間、男は、鞄を振り続けたのだろうか。
あたりは、夕暮れに染まった。